嘘予告

突発的に思いついたので、まぁ。
何かをするというわけでもなんでもなく。


バイストン・ウェルの物語を覚えている者は幸せである。
心、豊かであろうから……



「毛唐の血が入った男が、大和魂を語るかよ!」
リンレイ・メラディの色香にとりつかれたカミカゼがさ、そういうことを言うのか!?」
「気安く女王の名を呼び捨てにする! 許せることではないな!」
「オーラがさ、単純に過ぎるんだよ! そんな男は、聖戦士とは呼ばない!」

 スィーウィドーのゆらめきを背にして、オーラの光が走った。
 激突する青と金色のオーラ光、リーンとガーゼィの聖戦士。
 迫水真二郎上飛曹と千秋クリストファである。



「ハッハァッ! 旧式のモビルスーツが、マン・マシーンの前に立つから、お陀仏になるんだよ!」
 ウロ・ウリアンの駆るブロン・テクスターはシールドからファンネルの光を放って、丘の稜線越しに狙撃をかけようとしたジェリド・メサバウンド・ドックを串刺しにしてみせた。
 が、その勝利感は長く続かない。
「なんだ……?」
 ウロがその閃光に気が付いたときには、コクピットを閃光が貫いて、マハの名で人類を支配したいと欲望する青年は、死んだ。



「あれ……スペース・ボールだろ?」
「ああ……オノレのアラフマーンは、順調にインティパの力と呼応をしている」
「だから、オーラロードが開いて、オルファンが浮上したってことか? なら……」
「その感じ方は正しいな、イサミ・ユウ。だが、大局を感じるというのは別のことだ」
「わかってる。ネリー・ブレンが語ってくれていることだ。あの光は、本質的にオルファンと呼び合っているよ。オノレは、ビビッドなのさ」
「アベニールか」



「あんな舟ごときは、叩いて見せればいいんです! 自分はニュータイプですから、やれます!」
「そうはいうが……」
 ハサウェイ・ノアは、ルロイ・ギリアムという若いパイロットの血気に苦笑をした。
「ルロイのリック・ドムには核弾頭はついていないんだ。ソロシップのバリアーを抜くのは、無理だよ」
「ですが、あの巨神は我々スペースノイドに滅びをもたらすと見えます。イデとオルファンに挟まれて、死にたくはありません」
「閉塞した理屈だな。眼前のことしか見えていない。真に危険なのは、人間だよ」
「人間?」
「アフランシ・シャアだ。あの傀儡のプレッシャーがこのバイストン・ウェルを飲み込むのは、そう遠くないぞ」



「貴様が、貴様らロゴ・ダウの異星人がダラム・ズバを殺した!」
「おやめなさい、異界の人! そんな理屈で人を殺して、復讐と復讐で鎖を作れば、ガロウ・ランの地獄に堕ちます!」
「貴様! 聖戦士とかをくわえこむ売女が、そんなことを言うのかよ!」
 ハルル・アジバの光剣をからくも鞭で打ち払い、リンレイ・メラディは荒い息をついた。
「……カ・オスにとりこまれた女……!」
 刹那、銃声が響いた。
「そこまでだ。この場はそんな些細な怨恨を振りかざしている場所ではない、と理解してもらいたいな?」
 シルクハットをかぶり、踊るように現れた細身の女。
ハマーン・カーン殿!?」
「ご明察だ」



「オーガニック・エナジーの放出を、本当に押さえ込めると思っているのか?」
「大丈夫ですよ、ジョクさん。Vセカンドのミノフスキー・ドライブは、オーガニック的なものと相性がいいってファウ・ファウが言ってましたから」
「だが、君のような子供がやることはないだろう、ウッソ・エヴィン?」
「子供だからやれるんですよ。カットグラの援護、あてにしていますよ?」



「この、バイストン・ウェルにイデの力が顕現したこと、アフランシ殿はどう見られますかな?」
「わかりません。ただ、あのオルファンの輝きには、メタトロン以上に人類を導く力があると見えます」
「そうでしょうな」
 若い同盟者を満足げに見やって、ドレイク・ルフトは杯を干した。
「あれはよきものです」
バイストン・ウェルの伝承でしょうか?」
「……いや……」
 深く、ドレイクはソファに身を沈めて瞳を閉じた。
「信心ですな」



「だが諸君、この破嵐万丈がいる限り、あらゆる陰謀は白日の下にさらされるのだ! 必ずな!」


アゥラ・エナジーの飛翔する果て、老王の苦悶もむなしく、今イデが発現する。



バイストン・ウェルだって死にたくはない! そういうことだ!」
「だからイデを導いた? そうして、知的生命を殺したがっている!?」
「そんなのじゃ、そんなのじゃ悲しいでしょう? ブレーーーーェェーーーン!!」



Happy Birthday to You.