与太郎戦記

与太郎戦記 (ちくま文庫)

与太郎戦記 (ちくま文庫)

両親が読め読めというので、読める。*1
他界された春風亭柳昇師匠*2が、陸軍の機関銃中隊にいたころの回想録をまとめた古典的傑作。
入営から中国への派兵、占領地での暮らしぶりから最後の輸送船での対空射撃戦闘まで、とにかく人間味に溢れた人々の活写ぶりがさすがは大師匠という切り口で実によろしい。ああ、こんな名著をもっと早く読んでおくべきであったと後悔しきり。
中国戦線の話というとどうしても、自己卑下になったりあるいは自己弁護になったりと、政治的になかなかニュートラルというわけにはいかないのですが、「良き侵略者」ないしは「間の抜けた侵略者」であるところの著者の姿は、「下っ端ってのはおおむねこんなものであるよなあ」というペーソスに充ち満ちております。
よくTRPGなぞやっておりますと、「実際の軍隊ってのはァ……」と口角泡を飛ばし、別段戦地に行ったわけでもねぇのに“あるべき軍人”について長口舌を振るう人がいて、だいぶこうゲンナリする人もいると思うんですが、そういうときにこの本を読んでおきますと、「そういう下士官のお茶にはぞうきんを絞ればよい」ということがわかります。
大変教育によろしい。

友人だとkouさんや恋あたりには強くオススメ。

*1:帰郷した息子にこんな本を薦める両親というのは心底どうかと思う

*2:究極超人あ〜る』の校長の元ネタ