続・賢そうな文章の書き方(実践編)
前回のエントリが割と好評だったので、調子に乗って*1書いてみるテスト。
というわけで今回は、お茶の間でお手軽に使える賢そうな文章*2を書く講座を。
主に文学作品・アニメ・ゲーム・マンガ・歌舞伎・浄瑠璃・パイライフなどの批評ごっこに使えます。パーティの席上で是非どうぞ*3。
例文A
●●という作家の文章は××をヒントにしている、という事実は考えさせられるものがある。
ここで重要なのは、考えた内容はどうでもいいことです。
「なるほど、ジョジョ第三部はバビル2世をヒントにしているのか。それはそれとして今夜はスパゲティにするか」という内容でよいのです。
例文B
●●という作品の提示した問題は、現代にも通じる問題意識を有している。
人間社会の問題なんてものは四千年間たいして変わっていないので、どっかしら共通する問題を見つけられます。
まあ、見つけられなかった場合でもあなたにどこが問題なのかを説明する必要はありません。質問者に「あなたは現代的問題意識を有していないオリエンタリズムの走狗*4」とでも言っておきましょう。相手が悩み出したらしめたものです*5。
例文C
●●氏の筆者に対する批判はまったく根拠を持たず答えるに値しない。
鏡を見ろ、と言われる前に家中の鏡を破壊しておきましょう。
大丈夫、あなたが正義です。
例文D
ラーメンはつけ麺より優れている*6。この事実を証明することは(以下五万字ほど略)というわけです。反論をお待ちしています。
五万字ほど無関係なことを書いておけば、反論してきた人間はどこかを読み落とすか誤字をやらかすか勘違いをします。そこをひたすら揚げ足を取れば、本論への指摘からは逃げられます。
大事なのは論旨の正確さではなく、議論の誠実さでもありません。とにかく自分の正しさをゴリ押しで証明することです*7。
例文E
●●の現代的解釈については××を参照するとよくわかると思います。
●●という作品にはあなたが好きなものを、××には大してメジャーではないが権威のある作品をいれましょう。
これであなたが好きな作品に言及する凡俗どもは「わかってないヤツラ」です! 現代的解釈、というのはこの場合、「あなたの主観による好み」という意味です。
もちろんなぜ解釈しなければならないのか、どうして相手に参照の義務があるのかは私にもわかりません。大事なことは、あなたがインテリぶることであって、創造的な知的行為を行なうことではないのです。
例文F
これもまた読者皆さんの研究課題という事になるのでしょうね。
考える義務を相手に押しつけましょう。
考えないなら相手が悪いのです。あなたは正しい!*8
例文G
●●さん(あなたにとって都合のよい権威のある批評家)の見識には、自分で努力せず言論の成果だけをむさぼろうとする者たち*9には決して到達できないものがある。●●さんの意見こそ拝聴すべき価値があるだろう。
虎の威を借る狐という言葉はあらかじめ辞書から消しておきましょう。
また、●●氏は他の場所ではあなたとまるで違うことを言っているかもしれませんが、そんなことを愚民どもに知らせる必要はありません。
宿題
この例文を見て、本当に賢そうに見えるかどうか冷静に考えてみましょう。