喪中につき新年のご挨拶は控えさせていただきます。
というわけで新年から那須正幹ブームが自分の中で吹き荒れておりまして、『ズッコケ』シリーズを熟年まであらかた片付けた後は、中学生ぶりくらいに『ぼくらは海へ』を読んでおりました。
名作の誉れ高い同作、どういう話かというと、それぞれに欠落を抱えた小学六年生の少年たちが埋め立て地でヨットを作り始める。やがて嵐の夜、ひとりの少年が命を落とすことで造船計画は破綻するかに見えるが、それでもふたりは船を出し、ひとりはそれを永遠に見送る――
というあらすじです。とにかくその思春期の入り口にさしかかった少年たちの苦悩をビビッドに描き出した児童小説の大傑作。中学の時に読んだときの自分は「これは自分のことを書いているのだ」と大いに感動しましたし、船出する勇気もなく、といって彼らから目をそらすこともできないという結末に大いに共感しました。
で――45になった現在も同じ感想だ、と書こうとしたのですがはたと気づきました。いやそんなことはない。自分は安定したカタギの生活を捨てて、フリーランスというイカダに乗り、運命の海へこぎ出したあげくに揉まれまくり、ここが黒潮だかオホーツク海だかもわからない。してみると人生には「気がつくと船出していてもう戻れない」ということもあるし、船出した側からすると悲しまれても困る、ということもあるわけで、那須正幹がこの結末をある種の希望を持って書いた、と述べているのも案外そういうところにあるのかな、と思ったりしました。
ところで未読の方は、『ズッコケ中年三人組』シリーズも是非。三人組唯一の独身であるハカセと、クラスのマドンナ荒井陽子のロマンスの緊張感がすごいんですよ! 40超えてると10代20代にはないものすごいプレッシャーが、「人生の重さ」みたいなのがまとわりついてくるのがとにかく熱い。損はさせないので是非。