デッドライジングネタもうちょい加筆

相変わらずエグいので自己責任で。


人間を食う、という定義があるメタヒューマンとしては、『ローズ・トゥ・ロード』の鬼族(いわゆるオーク)もそうですね。
これは北の果て、魔国デュラから攻めてきては、ただひたすら略奪と殺戮をこととするとんでもねえ種族。なにがとんでもないって、お互いで勝手にぽこぽこ増え、お互いに共食いしたり人間と繁殖したりして補給の必要がない(!)という大変に厄介な敵。こいつらとの戦いはほぼ確実に殲滅戦になります。そしてこれがローズの恐ろしいところですが普通にPCにできます。一応他のPCをモリモリ食わないくらいの理性はある、と書いてありますが、エッジな限りだなあ、と思います。ちなみにこれは食べなくてもいい、単にお肉の一種として食べるだけなので、食べないプレイに特に障害はありません。


後、人間つうか一部分をモリモリ食うのが、我らのマインドフレイヤことイリシッドですね。D&Dに出てくる、顔面がタコみたいな知的種族です。触手で相手を絡め取って脳を吸い取るという大変そのDMの殺意だけが見て取れるナイスな種族です。古いファイナルファンタジーファンにもおなじみかと。
メタヒューマンの設定を積み上げることには定評のある『D&D』だけあってイリシッドも山のような設定があるわけですが、かいつまんで申し上げると、彼らテレパシーを主要なコミュニケーションと支配の手段に使っている種族なんで脳を重んじるんですね。だもんでじつはこれも食わなくていいらしく、3.5版のサプリメント『高貴なる行いの書』では、善の神の教えに目覚めて悪しきものどもをその触手とカンフーでやっつける美少女(!)イリシッドモンクのキャラクターが紹介されています。牛の脳*1とかで我慢してるんじゃなかったかな確か。

未訳ですが『ヴァンパイア:ザ・マスカレード』のサプリメント『Kindred of the East』に登場するKuei-Jinなる種族は、これは地獄(Yomi)から脱走してきた悪鬼の類で、人を喰らい気(Chi)を啜る鬼だったものが、修行の結果、吸血するだけですませることができるようになった、という存在。これなどは、「かつて喰っていた」というところを強調することで人ならざる怪物性を強調し、その上で実プレイ上は食べる必要がないんで他のプレイヤーを不快にする必要もない、というよい設定だと思います。もちろん喰えなくはないんで、「おうおう美味いなあお前の肉はよ〜」という『うしおととらごっこも可能っちゃ可能です。

後は『トーキョーN◎VA』のヒル*2の装備には、アムブロシアという「喰うと美味い」という大変ダイレクトな能力があります。もちろんヒルコには知性を持ったマツタケや知性を持ったアンコウ、神戸牛なども含まれるわけですからこれはまったく問題ないわけですが、「食う」ではなく「食われる」ほうに着目した意外と数の少ないデータではあります。

えーと後はなんだ。『ルーンクエスト』のトロウルの話は……まあ有名だからいいや。
ええ、学者さんの説によりますと、我々人間はおそらく樹上生活から平原生活に置き換えた時に、それまでのんきにやっておりましたのが、虎や狼にモリモリ食われるようになりまして、捕食者に対する本能的恐怖が刻み込まれることになったんではないか、とうかがったことがあります。我々が共食いを忌避するのも、また怪物の記号として「人を食う」というのが入りますのも、突き詰めるとこの恐怖によるものではないか、というんですな。
もちろん、たとえば大いなるクトゥルフなどは人を食わない*3わけで、恐怖=人食い、というのはこれはあまりに早計だとは思いますが、対話の困難さの演出として、また異質さの演出として、食うの食わないのというアプローチは不謹慎ながらそれなりに興味深いものではあります。
とかく人間との異質性というものは強調しないと単なる人種や体質の違う人間程度になってしまいますし、強調しすぎると感情移入できない単なる脅威になって理解される前にショットガンをブチ込まれるだけの存在*4になってしまうわけです。


怪物だと思われていた存在は実はそれなりにいいやつだったんだよ、というパターンはこれは大変に面白い物ですが、これまで見てきた通り、ともすれば天敵との偽善的な和解、ということにもなりかねません。かの『幽☆遊☆白書』で主人公が出した結論はあれはしびれましたが中々マネできるもんじゃない。ウルトラ怪獣とはまあ仲良くできないこともないかという気もしますが、人間をモリモリ食う*5ウルトラマンネクサス』のスペースビーストとは和解もへったくれもないわけです。逆に『ガンパレード・マーチ』の幻獣は口を持たない*6ことで、人は殺しても人は食わない食えないことを暗示しているというあれは面白いデザインでした。
というわけで強引なまとめですが、『デッドライジング2』がどのような結論を出すのか、楽しみに見守りたいと思います。

※加筆:しまった! 『ソイレント・グリーン』*7の話を忘れてたけど忘れてていいような気がするぞ! とりあえず『ソイレント・グリーン+麻雀』で『雀鬼2025*8』を生み出す石川賢先生は天才だと思います、というところでお茶を濁したいと思います。

*1:死ぬまでにあといっぺんだけ食べたい! 当然生な!

*2:これも最近人権が認められつつあります

*3:たぶん

*4:サイレントヒル』をうろうろしてる怪物と午後のお茶を楽しみたい人はおそらくゾンビの過去に思いを馳せたい人よりさらに少ないはず

*5:本当にモリモリ食う

*6:ヒトウバンのあれは類似器官で消化器官ではない

*7:自分の意に染まぬカニバリズム、というのはどっちかというと社会制度に対する恐怖のメタファーなので今回の大筋とは関係ないしな!

*8:千点ごとに暴力(バイオレンス)を一発、というひどいルールで麻雀をやる漫画。主人公は石川賢主人公なので、暴力一発で人の内臓ひきずり出して殺せます。従って、タンヤオのみであがっても相手が倒れるという斬新な麻雀が眼前に展開。面子がいなくなったら死体を座らせます