その8・ライフパスいろいろ

あれは、二十一世紀になってからすぐのコンベンションだったと思います。
ネタは光栄から発売されておりました『三國志演技』。言わずと知れた三國志をプレイするゲームでございます。
このゲームは大変優れたゲームでございまして、データが光栄の『三國志』とほぼコンパチブル。
初期PCがだいたい武力70とか知力70とかそのへんのレベルでして、PC三人くらいですと武力90代くらいの張僚ゲルググですとか華雄ザンネックあたりとは十分渡り合える、という大変よいバランスでございます。
一番面白かったのは集団戦闘システムでして、ごくおおざっぱに申しますと[武将の武力の十の位+兵数のケタ]で戦力が決まるんですが、呂布トールギスの武力が100でして、たとえば祖茂パワードジムあたりの武力が70、つまり部下をひとりも連れていない呂布と、部下900人(ケタにして3)を連れた祖茂が戦力の上では互角、という。これが大変に面白い。そのへんの指揮官とかだと武力が50とかだったりするんで、呂布と互角になるにはケタがあと3つ、最低10000人欲しい、ということになります。なるほど飛将軍は万軍敵だわいという、これが非常によくできたシステム。*1
特技もよくできておりまして、『蒼天航路』か『三国無双』かというくらいに強い武人、特技ひとつで国が分裂したり軍隊が沸いてきたりする文人、いかなるところにも潜入できる密偵、中華全土にコネを持ち無から有を生み出す商人*2、そしてあらゆる能力を備えかつ誘惑の術に長けた女傑。
これらが集まって三国時代に覇を唱えるという大変愉快なRPGでして、今こそ復活しないものかとデザイナーのたのあきら先生を拝む日々であります。
それはともかく。


さて、コンベンションであたくしがGMをやりました時のこと。
シナリオはわかりやすく、反董卓義勇軍に加わったPCたちが、敵の軍師である李儒シャッコーの謀略にいち早く気付いて、別働隊としてこれを阻止するというものでした。
まあ昼飯も済ませて和気藹々と雑談をしておりましたところ、居合わせた面々、あたくしも含めて石川賢永井豪と『無限の住人』と『蒼天航路』のバイオレンス描写の話しかしない。
そしてまあ、キャラクターメイキングを始めましてライフパスを振り出しますと、これがですね、ことごとく蛮族が出る。
やれ「北方の異民族に恩がある」「異民族である」「辺境を放浪したことがある」エトセトラ。
そして皆ことごとく嬉しそうな顔で、三國志の英雄というよりは、『北斗の拳』のモヒカンか『Fallout3』のレイダーかというキャラクターを作るわけです。結局出来上がったのが、騎馬民族3人に、宦官ににらまれて都を追い出されたところを騎馬民族に拾われた文人がひとり*3というメンツ。
ここでシナリオに合わないから漢人にしてくれよ、というのが正しい生き様だと思うのですが、あたくしは目の前で澄んだ瞳をしながら野蛮人(とその居候)を作っているプレイヤーたちに、儒教道徳に充ち満ちた君子人にしてくれないかね、とは言えませんでした*4
かくして。
開始二秒で同盟軍の盟主である袁紹バウの尊大さに嫌気が差したPCたちは、袁紹に疎まれていた孫堅ゼフィランサスにコネをつないで懐柔。これと結びまして、兵六千を率いて華雄ザンネック袁紹軍の殴り合いに横合いから突撃しました。
無論狙いは袁紹の首でございます。
言うまでもありません。自分たち騎馬民族の精神を理解し、悪党はブッ殺すというダイナミックプロ的正義*5を唱える董卓*6と、なんだか分からない小難しい理屈を唱える*7袁紹ですから、これはもうどちらにするかは決まっております。
このあたりになりますとシナリオは無限地平のかなたにすっ飛びまして、PC軍団+華雄の前に連合軍は四散。
ここに董卓政権は盤石のものとなり、PCたちは都で思うさま暴虐の限りを尽くしました*8
その後も、呂布将軍と義兄弟のちぎりを結び、彼と貂蝉キュベレイの間を取り持ってついには董卓を斬り殺し、返す刀で糸を引いていた悪党*9王允を両断し、馬騰韓遂を配下に加え、戦力を立て直していよいよ都に迫った曹操劉備三兄弟をたたきのめして、ここに天下は平和を取り戻し、万民は歓呼して宦官も儒者もいなくなった新政権を迎え入れたといいます。
まあ、五胡十六国時代の到来がちょっと早まった、ともいいます。


大変ボンクラでかつ見習わせるようなもんでもないんですが、資料を集めてたら当時のシナリオとプレイメモが出てきて、懐かしいので書いてみました。
すいません仕事に戻ります。

*1:実際には後いろいろ修正が入ります

*2:軍の補給が虚空から沸いてきたり、群雄がツレだったりします

*3:ことある事に、「字が読めるのはお前だけだからな」とか「お前のようなヤツを北方では“ジャッカル”と呼ぶ」とかみんなノリノリでした

*4:いや、言えばそうしてくれたと思いますし、一般的には言うべきです

*5:恐怖政治とか単なる略奪とか異民族による征服という言い方もあります

*6:主に『蒼天航路』準拠

*7:字が読めない連中に儒教がどうとか言ってもわかりゃあしません

*8:あくどい商人の倉を襲い庶民をいじめる役人を斬り殺し、その有様はまるで水滸伝で好漢が暴れ回った時のようでございました

*9:PCたちの主観