中世を旅する人びと

中世を旅する人びと―ヨーロッパ庶民生活点描 (ちくま学芸文庫)

中世を旅する人びと―ヨーロッパ庶民生活点描 (ちくま学芸文庫)

ファンタジーの原点ということでこちらも。
中世ドイツ史の大家である阿部謹也先生の業績について今更あたくしごときが何か申し上げるのもあれな話ですが、親父の蔵書にあった*1この本は、『ソードワールド』に熱狂していた中学生の僕にとって聖書でした。
中でも、「中世ゲルマン人の社会では、たとえ一片のナイフといえども武装していることが自由民の証であった。武器を帯びることが人権の最初の一歩であった。従って、武器を作る鍛冶屋は村落からの逃走さえ許されなかった」というのは大変感動しました。
それまで、現代日本の常識で「武器など持って歩いていたら捕まるであろう。武器屋なんぞあったら領主が取りつぶすであろう」と勝手に考えていた自分のドタマにショックを受けたものであります。当時、親父に「いってみればゲルマン人から武器を取り上げるのは武士から刀を召し上げるようなものだ」と言われまして、なるほどナア、と思ったものです。
今でも折に触れて読み返すこの本は、自分が何も知らないこと、世界には自分と違う価値観が満ちていることを思い出す第一歩になります。
とても大切な本です。

*1:すいませんまだ返してません