ひさびさにウルトラセブン
- 出版社/メーカー: 円谷プロダクション
- 発売日: 2009/07/29
- メディア: DVD
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ひさびさに『ウルトラセブン』を視聴する。
自分にとって理想のウルトラとは何か? という問いは本当に難しい。世界観の完成度としては『ウルトラマンメビウス』が、志の高さなら『ウルトラマンネクサス』が、思い入れでは『ティガ』『ダイナ』『ガイア』のいわゆる平成三部作が、怪獣プロレス*1としての総決算としては『A』『タロウ』も捨てがたい。『レオ』と『80』には並々ならぬ思い入れがあるし、もちろん初代は最高だ。列挙を続けると全作品の紹介をしてしまうのでこれくらいにしておく*2。
だが、セブンである!
『ウルトラセブン』という作品が珠玉の名作であることには異論はないであろう。よってこの後の論*3は、あなたが『ウルトラセブン』を全話見ていることを前提にする。
つまりネタバレがあるということだ。
まず、モロボシダンはカッチョいい!
若き森次晃嗣氏の、あるときは子供たちと同じ視点で快活に笑い、あるときは宇宙人として苦悩し、あるときはアンヌと悲恋を演じるその演技のすばらしさ、いかにもな昭和のハンサムぶりはどうだろう! こんなカッチョいい男はいない。もちろん今のダンディ4も異様に格好いい。
そしてウルトラセブンは強い! なんせ最初は三分間という制約さえないのである。メチャメチャ強い。勇猛果敢、万能兵器*4、美貌と幸運でもって事態を難なく切り抜ける。こうでなくてはいけない。これでこそお茶の間のヒーローである。
だが、そのセブンも度重なる侵略宇宙人との戦いに傷つき、ついに体を病んで倒れる。ここに至る流れの丁寧さは本当にすばらしい。間違っても、「体調不良でウッカリミスして侵略者の来襲を許した」*5などという存在ではない。25話のガンダーから丁寧に、20話以上をかけてダンの体は傷つき、むしばまれ、ボロボロになっていくのである。だからこそ、アンヌの最後の叫びが輝くのだ。そして、その叫びに答えて、ウルトラセブンを「ダン」と呼んで応援するウルトラ警備隊員たちは感動的なのだ。これこそドラマの美しい積み上げというものである。
『ウルトラセブン』という作品は、しばしば苦悩や悲劇といった文脈で語られる。だがそれだけではない! 断じてそれだけの浅薄な、政治的イデオロギーの宣伝ではないのだ!
考えてみてほしい。
『セブン』の後、地球を守ったMATはどのような組織だったろうか?
ウルトラ警備隊のように、他の星を兵器でR1号で粉みじんにするような組織ではなかったではないか*6。シビリアンコントロールを大切にし、市民の目線から、怪獣に立ち向かうヒーローたちだったではないか。
それは間違いなく、モロボシ・ダンという偉大なヒーローが私たち地球人に伝えてくれた魂なのである。
追記:あと、「宇宙の平和を守るため地球に飛来した超人」なんかではないところもよい。彼は勝手に恒点観測員という任務を放棄して、地球人の命がけの姿勢に惚れ込んで、他の宇宙人やノンマルトから裏切り者のなんのと呼ばれ、自身も苦悩しながら、それでも我々地球人のために戦ってくれるのである。うれしくなるではないか!
そして、この視点は同時に、他人の問題に介在するとき、我々は否応なく当事者であることができない、という悲しみと苦悩を子供に教えてくれるのである。
*1:断じて悪口ではない! 怪獣とウルトラマンがすごい特撮で殴り合うことはとても大事でとても面白いのだ!
*2:ここに載っていないウルトラももちろん全部見ている。ちなみにマンガでは一峰大二と内山まもるが双璧である
*3:筆者が“論”と言い出した場合、それは一般的にはヨタ話を意味している
*4:アイスラッガーとウルトラブレスレットもし戦わば、という問いは筆者の中では永遠のテーマである。ウルトラホークとガンフェニックスもし戦わば、でもよい
*5:いや、そんな解釈をする人はいないだろうけれど。もちろん、そういう見方をするのは自由であろうし否定するつもりはない
*6:平成版セブンではウルトラ警備隊はあいかわらずでそれはそれでもちろん大好きです